認知度低めなセクシュアルマイノリティの登場する漫画まとめ

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ひとくちにセクシュアルマイノリティ(性的少数者)と言っても、星の数ほど様々なタイプが存在します。

ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどの言葉は認知度が高いですが、例えばゲイだという人がいても、″男性を好きな男性″という捉え方だけでは不十分な場合もあります。また、上記で挙げた四つのどれにも当てはまらないセクシャルマイノリティの人だっています。大枠でマジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)に分かれるとしても、マジョリティの中でさえ全く同じセクシュアリティを持つ人はいません。本当に一人一人違うものなのです。例えばマジョリティ女性でもスカートを履く人もいれば頑なに履きたくない人もいる、それもまたひとつの違いです。

昨今の漫画界ではLGBTを取り上げる作品もさほど珍しくなくなってきましたが、その中でも、あまり認知されていないタイプのマイノリティのキャラクターが登場する作品を、自分の知る限りでまとめてみました。

これから紹介する漫画の登場人物のような人は、フィクションの世界だけではなく実在します。

作品を読んで、セクシュアリティは一人一人違うのだと知るきっかけになれば。また、周りと性に対する価値観が違って孤独感を持っている人に読んでもらえたらなと思います。

この記事では二つの用語を多用するので、最初に意味を記載しておきます。

・性自認…自らの性別を何と認識しているか(よく使われる言い方だと「心は女性」とかいうやつです)

・性的指向…どの性別に対して恋愛感情や性的欲求を抱くか

 

『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』

吉祥寺だけが住みたい街ですか?(5) (ヤングマガジンコミックス)

吉祥寺だけが住みたい街ですか?(5) (ヤングマガジンコミックス)

  • 作者: マキヒロチ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: Kindle版
 

様々な理由で引っ越し先を探している女性客たちが、主人公たちの働く不動産屋に訪れ、自分に合った街と物件を見つける一話完結式の漫画です。

登場するお客さんは基本単身女性ばかり。

そんな中でも3巻でレズビアンカップルのお客さんが登場したこともありました。

そして、最新5巻で登場したのは「人生30年のうち誰も好きになったことがない」という女性です。

アセクシュアルの人がとても共感するキャラクターになっていました。

※アセクシュアル(エイセクシュアル/Aセクシュアル/無性愛とも)

他人に対して恋愛感情を抱かない人のこと

彼女は自分に結婚は無理そうだと思っていて、死ぬまで一人で暮らすためのマンションを購入しました。

なぜ結婚しないのか、なぜ人を好きにならないのか、なぜ女の独り身でマンションを買うのか――そんなことを彼女はよく周りから聞かれるそうです。

理由なんてありません。人を好きになるのに理由なんてないのと同じで、人を好きにならないのにも説明できる理由なんてないんです。

アセクシャルで人を好きになったことがないと、「まだ好きになれる人に出会えてないだけ」と言われることもあるでしょうが、確かに世界中にいる人間の中のただの一人も好きになれないなんて証明はできるはずもありません。だって世界中の全ての人に出会うことなんてできないから。でも人を好きになれる人は、アセクシュアルの人と同じ条件下で生きていても好きな人ができます。それが例え生涯のパートナーになる相手じゃなくても恋はしますよね。それと比べると、証明できるものがなくてもやっぱりアセクシュアル当人の中では、確信までいかずともそれに近いものを持つのです。

このように、 ″恋愛できない″と言うより″恋愛感情を持ち合わせていない″人達は存在します。

 

 

『マーメイドライン』

マーメイドライン (百合姫コミックス)

マーメイドライン (百合姫コミックス)

  • 作者: 金田一蓮十郎
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2013/08/30
  • メディア: Kindle版
 

百合作品の短編集です。

こちらの収録作品のひとつ『あゆみとあいか』には、MtFでレズビアンのキャラクターが登場します。

※MtF

出生時の性別が男性で、性自認が女性であること。逆に、出生時の性別が女性で性自認が男性の場合はFtM。

MtFの人はみんな男性が恋愛対象かというとそうではありません。性自認と性的指向に関連性はありません。

件のキャラクターを例に挙げれば、出生時の性別が男性、性自認が女性、性的指向が女性となるわけです。

また、仮に本人の気持ちとしては性別適合手術や戸籍変更をしたいと思っていたとしても、様々な理由でそれをしない選択をする人もいます。この漫画のキャラクターの場合は女性の体になることを望み、戸籍も女性にしたいと考えていましたが、″恋人″が理由で戸籍変更をしない決断をします。

だから、その人の過去や過程を知らず現状や決断の結果だけ見ても、その人の本当のことはわからないのです。

 

 

『ヒメゴト〜十九歳の制服〜』

ヒメゴト〜十九歳の制服〜 1 (ビッグコミックス)

ヒメゴト〜十九歳の制服〜 1 (ビッグコミックス)

  • 作者: 峰浪りょう
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/04/28
  • メディア: コミック
 

泥沼三角関係の青年向け漫画です。

この作品には様々な要素が詰まっています。他者からの性の押し付け、異性装、恋愛対象と性的対象…。

 

まず、体は男性で、自分は女の子だと言い女性の服を着て、性的指向は女性であるキャラクターが登場します。これだけ聞くとひとつ上で紹介した「あゆみとあいか」のキャラクターと同じように思えますが、こちらのキャラクターは、男性の体で女性と性交渉をしたいと思っています。つまり性別適合手術は望んでいません。

「それって性自認が女性なんじゃなくて、性自認が男性の女装家では?」と言われそうですが、違います。

性自認が体の性別と違うからといって、誰もが手術を望むわけではありません。人には人それぞれの″自然な姿″があり、例えばこのキャラのように″性器が男性、見た目が女性、性自認が女性″という状態が本人にとって自然体である場合もあるのです。これは別に、手術を希望する人より性別に対する違和感が軽い・悩みが少ないなどということではありません。マジョリティの人から理解されづらいという意味では同じで、そのためこのキャラも、普段は男性として生活を送り、付き合っている彼女も含め誰にも″自然体な自分″を見せられずにこっそり女装をしてきました。それに、性的指向とは別問題として自分の体が男性的に成長することに対して激しい嫌悪感を持っています。このように、ジレンマの中で生きているのです。

 

次に、恋愛対象として好きな女性(主人公)がいるのに、その人に対しては性欲がわかず、不特定多数のおじさんが性的対象という女の子のキャラクターについて。

このキャラの主人公に対する感情は別の意味もあるのですが、最終回を読む限りやはり恋愛対象としての存在でもあったのだと思います。でも、性的対象としては見れない。彼女には過去に闇があり、それがきっかけでおじさんとばかりセックスするようになってしまうのですが、諸々の人間関係や感情などが整理された後の最終回が来てもやっぱり彼女の性的対象は男性です。でも好きなのは主人公の女の子。

恋愛対象と性的対象となる性別が別々ということもまた、現実にあり得ることです。

 

最後に、セクシュアルマイノリティとは違いますが、ある意味一連のことに関しての根本的問題だと思うので記しておきます。主人公の女性キャラクターのことです。

彼女は元々男っぽい性格をしていて、同級生からも男扱いされてきました。特に中学から大学生の現在に至るまでずっと一緒にいる男友達からは、逐一「″男みたい″じゃなくて″男″」とまで言われる。

でも彼女の本心では、スカートを履いたり髪を伸ばしたりしたいと思っています。けど、周りからこれだけ″男みたい″と思われている自分にはそんなことできないと思っている。だから誰も見てない自分の部屋でこっそりスカートを履いています。

これも結局は「周りから″男″と思われてるから、性自認が女性なのに女性の服を着ることができない」ということで、周囲の認識が″本来の自然な姿″を出すことを阻んでいる点においてはセクシュアルマイノリティの悩みと同じではないかと感じました。

 

 

『ラヴ ミー テンダー』と、続編『ラヴ ミー スウィート』

ラヴ ミー テンダー (1) (バーズコミックス ガールズコレクション)

ラヴ ミー テンダー (1) (バーズコミックス ガールズコレクション)

  • 作者: 木々
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
  • 発売日: 2012/09/06
  • メディア: Kindle版
 

BL雑誌に載っているので一応はBL漫画なのですが、登場人物達はゲイではなくバイ率が高く男女の恋愛関係もしっかり描かれていて、MtFやFtMのキャラクターが多数登場する、かなり珍しいBL漫画です。

ここで取り上げたいのはメインキャラクターの一人で、身体上は男性であり、女性の格好をして生活する人です。本人曰く「″男が苦手な女の子″な男」

このキャラクターは父親が原因で男を嫌う節がありますが、気になっている女性も男性もいるので性的指向が女性とは限らないようです。

そして、性自認はなんなのでしょう? 既存のカテゴリーを挙げると、女性・男性・Xジェンダーがあります。

※Xジェンダー

性自認が"男性"でも"女性"でもないこと。中性(男性と女性の中間)・無性(男女どちらでもない)・両性(男女どちらでもある)など、様々なものがこれに含まれる。

おそらくそれらのどれよりも、本人曰くの表現が最も本人にとってしっくりきているのだと思います。このように、性自認ひとつ取っても端的に言い表せないものです。既存のカテゴリーに当て嵌めるならその3つのどれかになるのでしょうが、本人さえ良ければ当て嵌める必要などありません。一番始めに言ったとおりセクシュアリティは一人一人違うのが当然で、ぴったり当て嵌まる枠なんて元々自分の中にしかないからです。

 

 

まとめ

私もアセクシュアルでXジェンダーを自認しているので、色々な漫画の中で一言で言い表せないセクシュアリティを持つキャラクターが登場すると、セクシュアリティは一人一人違うということが少しでも広まってくれるのではないかと期待してしまいます。

ただ、「これらの漫画に登場するような人達はフィクションの存在ではない」ということを伝えたくてこの記事を書きました。ひとりでも多くの人に伝われば幸いです。